補聴器の使用を検討する上で、まず補聴器の「できること」と「できないこと」を区別しておくことは重要です。特にできないことを把握しておくことで、補聴器を過大評価することなく、上手な付き合い方ができると思います。
補聴器にできること
まず、補聴器にできることをまとめていきます。
聞きにくい音に対する聞こえの改善
補聴器のメインの使い方です。
風邪の症状が人によって違うように、難聴の症状も一人ひとり異なります。一人ひとりの難聴の状態に合わせて補聴器を調整することによって、聞こえが改善します。
音声が聞き取りやすくなるサポート
補聴器を使いたいと思う人のほとんどが「音声を聞き取りやすくなりたい」という願望を持っています。
そのため、補聴器は音声が聞き取りやすくなることを最大の目的として設計されており、音声が聞き取りやすくなるための機能が内蔵されています。例えば、音声以外の雑音を抑制する機能や、話し相手以外の方向からの音を抑制する機能などがあります。
耳鳴りの改善
近頃、補聴器の使用によって耳鳴りを改善することができるという報告があります。
しかし、全ての補聴器で全ての耳鳴りが改善されるというわけではありません。正しい知識をもった医師やフィッターによって調整されることで、耳鳴りの改善も可能なようです。
耳鳴りを治すために、「とりあえず通販で補聴器買ってみよう」は危険だと思います。
補聴器にできないこと
補聴器は難聴に対して万能ではありません。できないことを紹介していきます。
難聴の治療
難聴を根本的に解決する現実的な方法は、いまだありません。
補聴器を使用することで、聞こえにくい音が聞こえやすくなりますが、難聴が治る(=耳が良くなる)ことはありません。メガネをかけても目が良くなることがないのと同じです。
昔と同じように聞こえる
加齢によって難聴になった方の多くは、補聴器をつけることで若い頃と同じように聞こえるようになると思っていますが、残念ながらそれは間違いです。
良くも悪くも補聴器は音を大きくしているだけです。
そのため、脳の働きである音声を聞き取る能力を元に戻すことができません。
しかし、音を大きくするだけでも音の聞き取りは格段に改善します。それだけでなく、補聴器からの音を聞き続けることで、脳の働きが劣化するのを防ぐこともできます。
つまり、補聴器は今までの最大性能に戻す機器ではなく、今の最大性能を発揮するための機器と思ってください。
早口な言葉の聞き取り改善
これも上と同じ理由で、若い人が話すような早い言葉が聞き取れるようにはなりません。
補聴器をつけても周りの人の声が聞き取りにくいときは、「ゆっくり」、「はっきり」と話してもらえるようにお願いしましょう。
聞こえの改善を行うためには、補聴器を使う人だけの努力では成し得ません。周囲の方の協力も必要です。「それなら補聴器なんて使わない!」と諦めないでください。補聴器を使わない現状の方が、周囲のご迷惑になっている可能性もあるのです。補聴器を使ってコミュニケーションを取れるようになることがとても重要なことだと思います。
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