補聴器フィッティングと一言に言っても、様々な作業があります。
お客様の聞こえの確認、補聴器選び、補聴器の点検などなど、作業の種類やそれに必要な知識も多種多様です。
それらの作業のうち、最も重要な工程の一つが、補聴器の利得の設定でしょう。
補聴器の利得は、お客様のオージオグラム(聞こえの状態)などの情報から、お客様の要望に合った適切な大きさに設定されるべきです。
でもこれってすごく抽象的でわかりにくいですよね。
そこで、開発されたのがフィッティング処方式です。
フィッティング処方式とは、オージオグラムや年齢などのお客様の情報をもとに、最適な利得情報を導き出す計算式です。多くのメーカーでは自社のフィッティングソフトにフィッティング処方式を組み込み、ソフトに入力されたお客様の情報から自動的に補聴器の最適な利得を算出するようにプログラミングされています。
フィッティング処方式は、フィッターの経験から計算式かされたものや、研究機関によって実験的に開発されたものなど、複数存在しています。それぞれのフィッティング処方式は、目的が異なるので、使用する側もそれを意識して使用する必要があります。
基本的には、メーカーごとに推奨のフィッティング処方式がデフォルトとして設定されています。(ほとんどがメーカーが独自で開発したものです。)なので、フィッターは特に意識することなく、フィッティング処方式を利用しているのだと思います。
それでも問題はないのですが、フィッティング処方式を使い分けることで、より良い聞こえを提供できるかもしれません。
ここでは、代表的なフィッティング処方式を紹介しますので、参考にしてみてください。
そして、一つ注意点。
フィッティング処方式は、実験的に多くの人が良い聞こえになるように開発されたものが多いです。なので、一人ひとりに最適な設定にするためには、フィッターによる微調整が欠かせません。フィッティング処方式だけのフィッティングではなく、最終的に装用閾値が取れているか、お客様が満足しているかをしっかりと確認するようにしてください。
ミラー法
オージオグラムの形状を反転した利得設定を行う計算式。
オージオグラムと利得設定が鏡に写した関係であることからミラー法と名付けられています。
最古のフィッティング処方式というぐらい歴史的なものなので、現状実用性はないと思います。
ハーフゲイン法
オージオグラムの半分の値の利得を与える計算式。
ミラー法から経験的に最適化された計算式です。これも歴史的に古い計算式ではありますが、評価が高いようで、使用しているフィッターが多いようです。
DSL
カナダの西オンタリオ大学にて開発されたフィッティング処方式。
乳幼児用のフィッティング処方式として開発され、実験を重ね現在では成人にも対応した計算式もあります。
鼓膜面上での音圧レベルを意識した計算式で、実耳特性が考慮されているのが特徴です。
最新版のDSL m[i/o]については、「フィッティング処方式 DSL m[i/o]について」をご覧ください。
NAL
オーストラリアの国立研究所にて開発されたフィッティング処方式。
音声の明瞭度を高くすることを目的としたフィッティング処方式です。言語ごとの特徴を反映することもできます。
最新版のNAL-NL2については、「フィッティング処方式 NAL-NL2について」をご覧ください。
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