補聴器適合検査の指針(2010)のまとめ
補聴器は一人ひとりの聞こえに合わせて調整することが必要な医療機器です。
しかし、効果が絶対的に保証された調整方法は現代には存在しません。
そのため、補聴器がしっかりと有効に働いているかどうかを把握することが重要です。
そこで、日本聴覚医学会では、補聴器の効果を調べる方針をまとめた「補聴器適合検査の指針(2010)」を発表しました。
今回は、「補聴器適合検査の指針(2010)」についてまとめます。
補聴器適合検査とは?
補聴器がしっかりと装用者に対して有効な状態になっていることを、“補聴器が適合している”を言います。
補聴器が適合しているかどうかを調べることが「補聴器適合検査」です。
補聴器適合検査の指針(2010)の対象は医療機関
基本的には「検査」とは、医師が行う行為です。
つまり、補聴器適合検査も医師が言語聴覚士などの協力を得て行う検査に位置づけられます。
補聴器適合検査の指針(2010)は、医師が医療機関で行うことを前提に記載されており、販売店での実施は検討されていません。
検査方法:2つの必須と6つの参考
検査方法は、様々な条件や評価基準などを考慮して検討されましたが、詳細は割愛します。
検討の結果、以下の8つの検査方法が推奨されています。
1と2が必須で、それ以外は参考検査項目と記載され、適宜実施すればOKという位置づけです。
- 語音明瞭度曲線または語音明瞭度の測定
- 環境騒音の許容を指標とした適合評価
- 実耳挿入利得の測定(鼓膜面音圧の測定)
- 挿入型イヤホンを用いた音圧レベル(SPL)での聴覚閾値・不快レベルの測定
- 音場での補聴器装用閾値の測定(ファンクショナルゲインの測定)
- 補聴器特性図とオージオグラムを用いた利得・装用閾値の算出
- 雑音を負荷した時の語音明瞭度の測定
- 質問紙による適合評価
3~6は全て補聴器の音が適切かどうかを調べる方法なので、いずれか1つ実施すれば良いことになっています。
必須検査項目の概要
補聴器適合検査の指針(2010)で必須検査項目となっているのは、以下の2つです。
- 語音明瞭度曲線または語音明瞭度の測定
- 環境騒音の許容を指標とした適合評価
1の方法は、音声の聞き取りテストです。
2の方法は、うるさい場所で音声を聞いた時に、補聴器をつけていられるかを装用者が判断します。補聴器から出る大きな音が我慢できるか確認するためです。
少し専門的な言葉で説明すると、1は客観的指標、2は主観的指標を調べる検査方法になっています。
この2つの検査が合格となれば「補聴器装用が不快でなく、音声の聞き取りが良い状態」が担保されていることになります。
最終的な判断は医師任せ
補聴器適合検査の指針(2010)で注意しなければならないのは、「○○の検査が合格の場合、補聴器が適合している」とか「合格の数が○個だから補聴器が適合している」とか、最終的な補器適合の条件を記載していないということです。
あくまで「指針」なので、適合検査を行うための8つの検査方法と、それぞれの判定基準をまとめているに留まっています。
販売店での試み
上述したように、補聴器適合検査の指針(2010)は補聴器販売店での実施を想定したものではありません。そもそも販売員に補聴器が適合しているかを判断する権限はありません。
しかし、補聴器が有効に働いているかどうかは販売員が調整する上では非常に気になるところだと思います。
参考程度に個人的な意見をまとめます。
以下の2つの方法は、販売店で取り組みやすい測定方法だと思います。
- 語音明瞭度曲線または語音明瞭度の測定
- 音場での補聴器装用閾値の測定(ファンクショナルゲインの測定)
理由は、「大きな出力を必要としない」、「明確な判定基準がある」、そして「販売店の設備で測定可能」であるからです。
補聴器適合検査の指針(2010)には、適合の条件が明確に指定されているので、その条件を満たすように調整することは、何も悪いことではないと思います。
以上でまとめを終わります。
細かい方法を把握するには、本物を読むのが一番です。
以下のURLから補聴器適合検査の指針(2010)を開くことができます。