【補聴器の常識が変わる?】アメリカに見る補聴器と集音器の違い
補聴器って高いですよね。だけど、探してみると安いやつが見つかると思います。でもそれって本当に補聴器でしょうか?
通販や雑誌広告で見られる補聴器のようなものはおそらく補聴器ではなく「集音器」と呼ばれる機械です。
集音器は、ただ音を大きくすることを目的としている機械で、難聴に適した機械ではありません。詳しくは「補聴器と集音器の違い」をご覧ください。
(そもそも製品単体の広告が出ている時点で医療機器ではない可能性が大きいです。最近高○クリニックと議員の争いで話題になっていると思います。)
なので、「耳が悪いと感じたら、病院に行きましょう!集音器ではなく補聴器を使いましょう!」という運動が行われています。
しかし、アメリカでは集音器と補聴器の違いについて、近頃動向が大きく変わってきました。
今回は、アメリカでの集音器と補聴器の問題について紹介します。
まず、事の始まりは2年前です。
2015年10月に大統領科学技術諮問委員会(PCAST)が、補聴器業界(Hearing Technologies)に対して問題提起と改善要求を発表しました。
補聴器は、その他の産業と比較して価格が高いままで、また、使用者への費用対効果の説明が分かりづらく、販売体制に問題があると発令しました。
現在の補聴器は、対面販売が基本であるが、軽度~中等度の比較的程度の低い難聴は、自己診断で補聴器を買って良いようにしようと提案しています。
軽度~中等度の比較的程度の低い難聴と指定しているのは、加齢によって多くの人がこの程度の難聴に
なることを理由に挙げています。
また、自己診断で補聴器を買うイメージは、医用指定外薬品のように、処方箋の必要がない薬と同じように補聴器を買うというイメージを提案しています。
つまり、軽い難聴に対しては老眼鏡と同じように、補聴器を買えるようにしましょうということです。
そして、さらにPCASTは驚くべき提案をしています。
老眼鏡のように買える補聴器について新しくカテゴリーを用意し、しかもPSAPsもそのカテゴリに加えるようにFDA(日本の厚労省みたいな医療機器を認証する機関)に提案しています。
PSAPsとは、集音器にあたる機器です。
つまり、集音器と補聴器の境界を見直して、軽い難聴者に対しては手頃な価格や体制で買える機器を用意するように改善提案したのです。
この提案って、難聴者にとっては非常にありがたいことです。
「最近、耳遠いな―」と感じたら、医者にも行かずに、お店行って1万円ぐらい払えば、そこそこ聞こえるようになる機械を買えるようになるってことですから。
しかし、この提案にFDAを始め医療機器に真摯に向き合ってきた人たちは猛反発しています。
主な反論内容は「PSAPsはそもそも健聴者向けの機械だから!」ってとこです。
反発する側の本音は、
- FDAは、医療機器の申請数が減ることによって仕事が減る
- 補聴器メーカーは、価格競争に巻き込まれる
- フィッターは、補聴器使用者が減ることで仕事が減る
と言ったとこだと思います。
PCASTの発令から2年。
議論は平行線でありながら、この提案後はPSAPsの販売数が増え、事実上補聴器にも価格競争が起こっています。
この話はアメリカで起きていることです。
アメリカと日本では、補聴器の供給体制が異なることから、全く同じ現象が起きるとは考えにくいです。
しかし、世界の補聴器メーカーで価格破壊が生じ、格段に安い補聴器が発売されれば、日本の補聴業界にも影響が生じると思います。
もしかしたらそう遠くない未来、補聴器が手頃に買えることで、補聴器普及率も爆発的に高くなる時代がやってくるかもしれません。