難聴へのリハビリ計画と家族の関係
Hearing Reviewで紹介されていた記事を訳して、紹介します
この記事で紹介する研究は、「難聴者への対応は、家族が協力して行いましょう!」というものではありません。この考えは、難聴の方や家族のどちらにとっても負担になると思います。
今回紹介する研究では、「医師や言語聴覚士が、難聴者へのリハビリ計画を立てる際には、難聴者と生活することが負担になり得るという事実をしっかりと認識した上で、リハビリ計画に家族への考慮なども含むべきだ」ということを提案している研究です。
ご家族に難聴の方がいる場合、医師と今後の生活の仕方で相談したい方などの助けになるかもしれません。
難聴者とともに過ごすことによって、聞こえるように叫んだり、何度も同じことを繰り返したり、テレビの音が大きかったりと、疲れやストレスがたまることが多い。
ノッティンガム大学の研究では、難聴者へのリハビリ計画を立てる時には、難聴者の周囲の人々の状況を考慮すべきであることを提案している。
研究者のVenessa Vasによると、「この研究は、難聴者だけでなく、彼らの周囲の人々に与える影響について調査したものである。現在、難聴への治療方法はなく、様々な側面から手助けになる方法を考慮すべきだ。」WHOによると世界で約3億人が難聴であると言われ、難聴は社会生活が困難になったり、自己評価が低くなったり、職場での様々な問題を引き起こす原因となり得る。また、難聴は、本人だけでなく日常生活でコミュニケーションをとる周囲の人々(コミュニケーションパートナー)にも影響を与える。“コミュニケーションパートナー”からの情報により、しばしば難聴の程度や状況についてより正確な実態を知ることができる。
難聴者と家族の2つの見方
研究では、難聴者と近親者の同じ問題に対するそれぞれの不満を調べるために、70以上の先行研究をレビューした。
電話
難聴者は電話のベルや、相手先が話しているのが聞こえない。一方、近親者は電話を鳴らし続けたり、聞こえるまで話し続けなければならない
テレビ/ラジオ
ボリュームを上げると喧嘩の原因になる
社会生活
難聴者は騒音下での会話が難しくなる。パートナーは、難聴者と一緒にイベントに参加したり、一人でイベントに参加するようになったりと、楽しさは減る。これによって、難聴者もパートナーもさらに社会的孤立が進むようになってしまう。
感情
パートナーとコミュニケーションすることで、難聴に適応しなければならないという負担やストレスや、関係性からの感情的帰結が報告されている。難聴への反応や、パートナーへの困難への理解の欠除などが原因に依る罪悪感やイライラを表現している。
Vasによると、「難聴は全ての家族に影響を与える慢性的な症状だ。我々の研究はまだ、難聴者とそのパートナーたちの見方から難聴が及ぼす影響の実態をつなぎ合わせるという最初のステップにすぎない。オージオロジストとの面会を録画した記録の中では、家族は難聴に対して非常に強い関心を持っているようであったが、オージオロジストは彼らを無視していた。」
研究者たちは、治療の計画時に家族やパートナーの意見に耳を方向け、将来の処置に彼らを巻き込むことが、難聴者のリハビリの効率を高めると信じている。
解説
難聴者は家族や友人など周囲の人々の生活に影響を与えている。それであるならば、周囲の人々の意見を聞くことで難聴者の生活の実態を把握し、リハビリ計画にも協力してもらうことで、難聴者のリハビリをより良いものにしたいという目標を持った研究です。
今回の研究では、その研究の第1ステップとして、それぞれの問題(電話での会話やテレビの音など)に対して、難聴者と周囲の人々がそれぞれどのような意見を持っているかをまとめたものです。